144.「月下紅梅図 画賛」
天風先生の賛(詩)が付いています。「暗香浮動 月黄昏(たそがれ)」
意味:ほのかな香りが月の昇るたそがれ時にどこからともなく漂ってくる。
暗香:どこからともなく漂ってくる香り
左上のお月様と右の梅の木、絶妙なバランスを感じます。
林 逋(967-1028:北宋の詩人)の作のようです。林逋の詩には奇句が多く、「疎影横斜水清浅。 暗香浮動月黄昏。」の二句は梅を詠んだ名吟として広く知られている。日本でも林逋の詩は愛好され、貞享3年(1686年)の和刻本その他がある。(webより)
元の詩(山園小梅)は、以下の通りです。
・山園小梅<林逋>
衆芳搖落して 獨り暄妍
風情を占め盡くして 小園に向こう
疎影横斜 水清淺
暗香浮動 月黄昏
霜禽下らんと欲して 先ず眼を偸み
粉蝶如し知らば 合に魂を斷つべし
幸いに微吟の 相狎るべき有り
須いず檀板と 金尊を共にするを
意味:ほかの多くのかぐわしい花がゆれ落ちて枯れ枝となっている時に、あたたかく美しい梅の花だけがこの小園で風流なよいおもむきを独占している。
疎らな枝は清い流れの水に斜めに影を映し、ほのかな香りが月の昇るたそがれ時にどこからともなく漂ってくる。
霜がれどきの鳥は、梅の枝に下(くだ)ろうとして、定めかねてあたりをぬすみ目で見まわし、白い蝶も今、もし美しい梅の花のあることを知ったならばおそらくびっくりすることであろう。
幸いにひそかに詩を吟ずる私の声がこの花とよくうちとけ合うから、何も拍子をとる木をならして調子をとったり、黄金の酒樽を用意する必要はないのである。