210.「望月有懐 李白 清泉映疏松」
元の詩は、李白の「望月有懐」です。最後の部分(思君意何深⇒概世意何深)が異なります。
「清泉映疏松 不知幾千古 寒月揺清波 流光入窓戸 対此空長吟
概世:世の中のありさまについて不満をもち、憤慨すること。「慨世の士」
「清泉映疏松 不知幾千古 寒月揺清波 流光入窓戸 対此空長吟
(元の「望月有懐」には、「無因見安道 興尽愁人心」があります。)
《読み下し文》
月を望んで懐い有り
清泉 疏松に映ず、知らず 幾千の古なる、寒月 清波に揺らぎ、流光 窓戸に入る、此れに対して空しく長吟す、君を思うて 意 何ぞ深き、安道を見るに因無く、興尽きて 人の心を愁えしむ
〔日本語訳〕
澄んだ川面は、まばらな松林を映して美しい。
この眺めは、いったい幾千年の昔からのものなのだろう。
さえざえとした月の光は、清らかな川の波間に揺らめいて、
流れるように注ぐ光が窓から射しこんでいる。
この眺めに見とれながら、私はむなしく声を引いて詩を吟ずる。
君を思う私の友情はなんと深いことなのだろう。
それなのに今、むかしの王子猷が戴安道をたずねた故事をまねするすべもなく、
浮き立つ心がやがてしずまると、私の心は悲しみに沈むばかり。