227.「十牛訓_第七図 忘牛 序 1964年 夏」
・以下、読み下し(webによる)
法に二法無し、牛を且(しばら)く宗と為す。
蹄兎(ていと)の異名に喩え、筌魚(せんぎょ)の差別を顕わす。
金の鉱より出づるが如く、月の雲に離るるに似たり。
一道の寒光、威音(いおん)劫外(ごうげ)。
・意味
真理に二つあるわけではない。
牛を主題としてしばらく論じただけだ。
蹄(ひずめ)を持つ動物と兎が別ものであり、筌(ふせご、うけ)と魚が違うのは論ずるまでもない。
ただ牛を真の自己の喩えとして用いたに過ぎない。
真の自己はあたかも純金が金鉱からとり出され、月が雲をぬけでるのに似ている。
ちょうど、一すじの月の光が、威音王仏(過去仏)よりも以前からあるのと同じように、真の自己は大昔から存在しているのだ。