「宇宙真理とは」 木曜行修会 服部嘉夫
2018年5月24日
1.真理とは何か
まず真理の国文学的解釈から申しますと、真理の真は まこと、真実、「本当の」ということです。
理は大理石の理で、筋道、道理、道筋ということで、真理とは「本当の理論、道筋」ということになります。
天風先生は「本来人間は改めて、真理をいろいろ説き、聞かされるまでもなく、この世に生まれでた時から、絶えず、真理に接し、真理の中で生きているのである」と申されています。
丁度、魚が水の中で生きていながら、それを知らないのと同じで、人間は真理の中にいながら、この真理をなかなか自覚できない。私達が真理と共に活きていながら、それを発見出来ないのは、頭の上から帽子を被されているように、心が雑念、妄念に覆い被さっているからであると天風先生は云われます。
天風会で教わる安定打坐法を行い、雑念、妄念が除去され、本心が煥発された時に真理を悟ることが出来るのです。
真理を探究する人間の営みの学問は哲学と科学があります。哲学は原理を追求し、科学は法則を見極めます。
真理を哲学的に解釈すると、「何時でも、何処でも、誰れもが頷く妥当性なものであり、普遍性、真実性をもった道筋、道理であるということです。
天風先生がヒマラヤ カンチェンジェンガの麓、昼なお暗き密林の中でご修行中、師匠であるカリアッパ師から戴く、宇宙、生命、人間、人生に関する重要な事柄の命題(禅で云う公案)を静かに瞑想して、その答をカリアッパ師に認められた真理の悟りのエッセンスが暗示誦句集です。
黒表紙の誦句集の最後に「修道大悟の誦句」があります。
その誦句の冒頭に「そもさん吾等かりそめにも天地の因縁に恵まれて、万物の霊長たる人間としてこの大宇宙の中に生れし以上、先ず第一に知らねばならぬことは、人生に絡まり存在する幽玄微妙なる宇宙真理なり。・・・云々」とあります。
2.大いなる悟り
天風先生の第一悟りは「あゝそうだ!!吾が生命は宇宙霊の生命と通じて居る。・・・」(大偈の辞)であります。
それは「宇宙の実相と自己の根源や如何に?」と云う命題に対する答えでした。
私が今ここに居ると云う事は、父母が居たからであり、その父母の両親即ち祖父母が居て、一世代を35年として、一億回遡ると地球はアメーバの時代になります。即ち35億年前から私となる要素があり、私の命は生きて生きて、延々と活き続いてきたのです。「無から有は生じません」ですから私の命の長さは35億年プラス現在の戸籍の年齢であると云っても過言ではありません。
その命の要素である何ものか見えざる実在を一般的に大自然、大生命、造物主、根本主体、神、仏と呼ばれています。
天風先生はその見えざる実在のもつ霊妙で素晴しい働らきを讃美して、宇宙霊を称されました。
3.宇宙の創造
宇宙霊は、巨大な力、計り知れざる叡智を有し、厳粛な法則をもって、絶妙な創造活動を営み、万物を進化向上させ、一切を大調和あらしめようとする働きをもつ実在です。私達個生命は大生命である宇宙霊より生じたもので、宇宙霊の分派、分流であると天風先生は断言します。自然から分れたのが自分です。宇宙霊と私は同根と云うことです。
自分はこの世で単なる一人でなく、私の背後には慈愛を持って私を生かしたもう宇宙霊のいることを自覚しなければなりません。糸の切れた凧は凧ではなく、一枚の紙切れです。凧と私が糸でしっかり繋がって一体であるということです。
4.宇宙霊の働らき
宇宙霊は一切の現象の背後にあって現象を動かしている重大な働きを為しています。新陳代謝を手段として人生を支配する二つの作用があります。一つは、一つのものを造り上げてゆく結合と建設の働きであります。二つは元のエネルギーに戻す分解と還元の働きです。例えて云うと、柿の木は春が来ると芽を出して葉が育ちます。葉では根から吸い上げたH2Oと大気中の二酸化炭素CO2と太陽エネルギーで光合成が行われ、含水炭素と糖質を造ります。花が咲き雌蕊と雄蕊が受粉し、秋になると柿の実が実ります。これを結合と建設の働きと云います。晩秋葉は錦に輝き、栄養分は枝に返して、葉は枯れ落ちます。落ちた葉は腐りH2OとCO2に分解されます。成長・開花・結実は結合と建設の働きであり、葉が落ち腐って元の要素に分解と還元されます。この二つの作用は、相反し矛盾しているように見えますが、双方が相俟って、協力し合って柿の木は年々大きく成長して行くのです。
仏教では、結合と建設を生のはたらきと云い、その逆の分解と還元のはたらきを滅の働らきといいます。人間で云うと男女が年頃になると愛がめざめ、結婚し精子と卵子が結合して、細胞分裂で行われ、10月10日経ち、1ケ細胞から2兆個の細胞として、赤ちゃんが誕生します。幼児から少年、青年、壮年になり、80~90才になり宇宙霊の働らきにより分解と還元の働らきが来たら感謝して天地の大霊(宇宙霊)に帰して行けば良いのです。